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神楽

高千穂夜神楽

高千穂夜神楽

高千穂夜神楽の起源は高千穂神社に伝わる「十社大明神記」の文治五年(1189)に神楽についての記録があり、それは平安時代末期まで遡ることになります。
高千穂夜神楽の構成や集成には日本の民族宗教に高い知識を持った修験僧(達)が深く関わったもので、陰陽五行説の思想などを用いたその証左は舞処の構造、舞いぶり、唱句などにおいて随所に見られます。
明治5年の修験道廃止令、第二次世界大戦、戦後の高度成長期などを経て宮崎県内の神楽の継承集落は以前の半分に減ってきています。
それでも最近のある調査によれば、県域では年間延べ350箇所で神楽が舞われていて、中でも夜を徹して舞う夜神楽は80箇所に及ぶのですから抜きん出た日本一の神楽王国なのです。
高千穂神楽は高千穂町に分布する二十余箇所の神楽の総称です。
天孫降臨の先導役をした猿田彦の「彦舞」にはじまり天照大神が天の岩戸から出てくる「舞開き」、そして八百万神がそれを喜び舞うフィナーレの33番までの、おそらく世界で最長時間にわたって演ずる舞台「高千穂夜神楽」は洗練されて成熟した国指定の重要無形民俗文化財です。
 

中畑神社:押方五ヶ村神楽

高千穂町押方地区の五ヶ村神楽の氏神様は中畑神社に祀られています。
夜神楽の当日の昼過ぎに村の男達が中畑神社に集まって「神迎え」の神事を行います。
そのあと、社務所での直会(なおらい)をして男達はそれぞれ集落に戻っていきます。

道神楽(みちどうらく):押方五ヶ村神楽

神の道に張られた道注連(みちじめ)に案内されるように神楽宿まで道神楽が行われます。

押方五ヶ村神楽

道神楽を舞いながら神楽宿に到着すると、古式豊かな神楽歌を唱和しながら外中連(そとじめ)のまわりを三回まわります。
そしていよいよ神楽宿に「舞い入れ」となります。

押方五ヶ村神楽

内中連(うちじめ)=神庭(こうにわ)の中に氏神が舞い降ります。

「神庭」は、神前を東と定め、太鼓の座が南、外注連が西になります。
東の神座(写真右手)には、皇大神社の「筥宮(はこにわ)」を中心に神面(おもて様)を置き、神酒や米、野菜、餅などの神が供えられます。

二間四方の四隅には、竹と榊を立て、注連縄(しめなわ)と「彫り物(えりもの)」と呼ばれる和紙の切り絵の飾りが飾られます。

「彫り物」は中央の鳥居、子授安産豊穣の「湯襷(ゆだすき)」、自然界の中央の土徳神、四方の木、火、金、水徳神、十干十二支等の切り絵が配され、神仏習合の陰影五行説の影響が見られます。

高千穂の注連縄は七五三で編まれ、天神七代、地神五代、日向三代を意味しています。
このように祭場に自然界の神々と里人との絆が表現されて、その結界の中で一年に一度、高千穂の人々は神々と一体となり、「神遊び」を行うのです。

猿田彦命の彦舞:押方五ヶ村神楽

33番まである夜神楽は、まず彦舞によりはじまります。
猿田彦命は神庭の注連の中をぐるぐる回ったり、机の引き出しをひっくり返したような木製の箱に乗って四方を拝みます。
この机の引き出しのように見える木製の箱は天の浮橋に見立てた一斗枡です。

瓊々杵尊(ににぎのみこと)が天降りしようとしたときに、天の八衢(やちまた)に立って高天原から葦原中国までを照らす神がいました。その神の鼻長は八咫、背長は七尺、目が八咫鏡のように、またホオズキのように照り輝いているという姿(天狗の原型)でした。

そこで天照大神と高木神は天鈿女命(あめのうずめのみこと)に、その神の元へ行って誰であるか尋ねるよう命じました。その神こそ猿田彦命で、瓊々杵尊の先導をしようと迎えに来たのでした。

瓊々杵尊は高天原を離れ、天の浮橋から浮島に立ち、日向国の高千穂の久士布流多気(くじふるたけ)に天降りました。

一斗枡はその天の浮橋にみたてたものです。



太殿(たいどの)の唱教の序章は次のようなものです。

そもそも太殿と申し奉るは、この所を高天の原と定め、東西南北に注連を引き、五色の幣帛を飾り、天孫降臨御供養の三十二神、天神地神八百万の神、当所の氏神勧請し奉る。諸願成就の御注連とは、拝み奉り給うものなりや。

そして序章に続いて東の注連を春の景、南の注連を夏の景、西の注連を秋の景、北の注連を冬の景、中央の注連を土用の景として、ここでも五行説を用いた情感豊かな詩章、それはまさに高い教養の持ち主が作り出した格調かつ美文調の詩章を誦じます。

鎮守:押方五ヶ村神楽

高千穂の神楽は天照大神(あまてらすおおみかみ)がその弟、須佐之男命(すさのおのみこと)の乱暴狼藉に怒り、天の岩屋に隠れたときに、世界は暗黒に包まれてしまい、八百万の神々は天安河原で会議を開き、ストリップの元祖といわれる天鈿女命(あめのうずめのみこと)がセクシーにそしてコミカルに踊ったのが始まり伝えられ、収穫の感謝と翌年の豊穣を祈願する、高千穂に古代から伝わる伝統のお祭りです。

一番 天孫降臨の先導役をつとめた猿田彦命(さるたひこのみこと)の一人舞に始まり、ようやく二十五番になって天鈿女命(あめのうずめのみこと)の登場で、しかし、ストリップの元祖といわれるには気品に満ちた優雅な舞があり、その後二十六番で赤面をかぶった力感が溢れる手力雄命(たぢからおのみこと)の舞、と展開します。



11月末から2月にかけて行われる高千穂夜神楽は、神楽宿となっている民家の建具を開け放して神楽舞が行われます。神楽宿の中で神楽舞を見る場合でも深夜は激しく冷え込みますので、十分な防寒対策が必要です。

神楽宿の所在は明るい時間帯に確認をしておくのを薦めます。
細くて、暗い坂道を歩いていくと「こんなとこに神楽宿…」という感じで明かりを見つけて、近づくと神楽の笛や太鼓が聞こえてきます。

庭には一晩中焚き火が焚かれ、竹を徳利にしてお燗をする「かっぽ酒」や煮物などが振舞われますが、本来、年に一度降臨する神々と里人が、神人一体となる直会(なおらい)の料理なのです。

神楽宿は家の改修工事やその他の事前準備の費用、当日の費用等々、かなりの経済的な負担があるようで、高千穂夜神楽を観覧に行く場合には、必ず受付がありますので金品を御初穂として供えるようにしましょう。




■ 神楽宿の祭り支度

夜神楽の祭り支度は、一ヶ月も前から始められ、総指揮を「元締め」という役目がとります。「中世話」が神庭と
呼ばれる神楽を舞うところを受け持ちます。「ほしゃどん」と言われる人達は神楽の舞手の世話をします。警護
の役は「注連(しめ)の番」、賄いの役目は「台所役(でいどこやく)といった具合に村人の役割分担で運営され
ます。

夜神楽は女人禁制が建前です。
最近では台所役を女性が担当するところもありますが、以前は煮炊き、膳拵え、配膳、接待まですべて男達によ
ってなされてきました。

最近では台所は女性が受け持つところもおおくなったようですが、神庭(こうにわ)の中は、今も女性は立ち入る
ことはできないそうです。

御神屋(みこうや):浅ケ部神楽

高千穂神楽は主に民家で行われ、表の間に御神屋と呼ばれる舞処をつくります。
神楽では方位が重要とされ、東の高天原(たかまがはら)の方向に神棚を設え、中央の天井には雲と呼ばれる
天蓋(てんがい)風のものが飾られます。

外注連(そとじめ)に繋がる「みどりの糸」は神々を導く印であり、太陽の光と考えられます。
写真は浅ケ部(あさかべ)集落の御神屋を再現したものです。

庭中連(にわじめ):浅ケ部神楽

神楽祭場には普通、庭注連(にわじめ)が設けられます。
3本のノボリダケを立て、いろいろな飾りをつけます。
これを目印に神々が天下り「みどりの糸」をたどって御神屋に現れます。
浅ケ部集落の神楽では二つの龍を飾った大型の本注連(ほんじめ)が作られます。


■ 夜神楽33番の内容

 一番神楽 彦舞 (一人舞) 猿田彦命(さるたひこのみこと)
天孫降臨の先導役をつとめた猿田彦命の一人神楽。
中央の天の浮橋に見立てた桝の上に立って、神庭(こうにわ)を祓い清める序曲舞で、天地のはじめから国生み
に至る順序を解き明かす。

彦舞:押方五ヶ村神楽

 二番神楽 太殿(たいどの) (四人舞) 久久之遅命(くくぬちのみこと) 
                           金山彦命(かなやまひこのもこと)
                       迦具土之命(かぐつちのみこと) 
                           水波売命(みずはめのみこと)
鎮守の社(やしろ)からお連れした神々の一夜の宿となる神楽宿を清め、神殿を建立する舞で約30分間つづく。
33番の神楽の中でも熟練を要し、四人の神は木火金水の四徳をあらわしている。

太殿:押方芝原神楽

 三番神楽 神降し(かみおろし) (三人舞) 神漏岐命(かむろぎのみこと) 
                              忍穂耳命(ほしおみのみこと)
                              中筒男命(なかつつおのみこと)
清めおわった神庭に八百万(やおよろず)の神々を招き入れ、祓い清める神楽で、諸神は三神に代表される。
入り乱れた足さばきでテンポが早く、一時間を要する難しい神楽。

神降し:押方芝原神楽

 四番神楽 鎮守 (二人舞) 大屋津姫命(おおやつひめのみこと) 
                    抓津姫命(つまずひめのみこと)
社の樹木などを司る二神によって、諸神が社に降臨し、鎮まりたまうことをあらわした神楽。
地霊を鎮める意味で、地を踏むしぐさをする。

鎮守:押方芝原神楽

 五番神楽 杉登り(すぎのぼり) (三人舞)  椎根津彦命(しいねつひこのみこと) 
                               莵狭津彦命(うさつひこのみこと) 
                               武御雷神(たけみかづちにかみ)
二神が素襖に烏帽子姿で舞っているところに、神面をつけた入鬼神(武御雷神)が割って入り、一段と活気づく。
古来より高千穂では杉は神々が降臨して宿る樹とされて神社の境内に植えられた。
「杉登り」は「神登り」であり、神々が降臨して、里人と「神遊び」をして、再び別れていく神楽である。
「神降し」「鎮守」「杉登り」を「式三番の神楽」といい、最も重要な神楽とされる。



杉登り:押方芝原神楽

 六番神楽 地固め(じがため) (四人舞) 天児屋根命(あめのこやねのみこと) 
                            事代主命(ことしろぬしのみこと)  
                            太玉命(ふとたまのみこと) 
                            五十猛命(いそたけるのみこと)
大国主命(おおくにぬしのみこと)の「国造りの舞」ともいわれ、この世の不安定な大地を四神が力強く、一時間
にわたり踏み固め、願成就を諸神に感謝する神楽。
相撲の「四股(しこ)」はこの地固めの神事からきている。
舞の中に太刀を使い、剣、つまり水の徳で耕地を潤して国造りをする。
ほしゃどんが両肩にかける襷は妊婦の帯が用いられ、地固めは子授、安産、悪魔祓いなどの願成就の神楽とし
ても舞う。
太刀は舞い終わると、神楽宿の家主に護符の宝剣として渡される。





地固め:押方芝原神楽

■ 
七番神楽 幣神添(へいかんぜ) (二人舞) 彦狭知命(ひこさしりのみこと) 
                              手置帆負命(たおきほひのみこと)
御幣を主としたもので、祓いの神楽。素襖(すおう)に烏帽子、鈴と御幣をもって、まず、「鎮守」が舞われる。こ
の七番の神楽を「宵殿(よどの)七番」といい、一時間あまりのこの舞が終ると神酒が出され、夜神楽はさらに活
気づく。

■ 八番神楽 武智(ぶち) (二人舞) 弟橘姫命(おとたちばなひめのみこと) 
                         衣通郎姫命(そとほりいいらつひめのみこと)


「鞭(ぶち)かざし」ともいわれ、武御雷神(五番)の出陣の神楽と伝えられる。情熱的な女神の舞は約一時間
半、トロベコトロベコスットントンという六調子の軽快な太鼓の音に熱気は次第に高まる。素襖(すおう)に赤の
ハチマキ、腰に荒神杖(こうじんつえ)、その両端に火と水を表す赤青の幣がつけられる。

武智:押方芝原神楽

 九番神楽 太刀神添(たちかんぜ) (二人) 経津主神(ふつぬしのかみ) 
                              武御雷神(たけみかづちのかみ)
武御雷神(五番)の戦いの神楽。天孫降臨に先だって使者としてつかわれた二神は、大国主命と交渉して国譲
りの和議が成り立ちます。武御雷神の戦いの様子で、八番 武智の舞によく似ており、はじめに扇と鈴で舞い
ながら、神庭とほしゃどんを清め、次いで太刀の曲技が勇壮な太鼓の調子にのって乱舞する。

 十番神楽 弓正護(ゆみしょうご) (二人舞) 月読見命(つくよみのみこと) 
                              天日鷲命(あめのひわしのみこと)
舞始めは、鈴や扇や榊を手にしているが、弓と矢に変わる。七徳五福を授ける意味があり、弓の神威をもって悪
魔を祓う神楽舞。たすきは村の妊婦の帯で、舞い終わると、宝剣の「宝渡しの儀」がある。

弓正護:押方芝原神楽

 十一番神楽 沖逢(おきえ) (四人舞)  天村雲命(あめのむらくものみこと) 
                            思兼命(おもいのかねのみこと)
                            事代主命(ことしろぬしのかみ) 
                            天穂日命(あめのほひのみこと)
天孫降臨のとき、高天原から水種をもってきた際の舞とも、大海原より来る神を迎える神楽舞ともいわれる。
素襖はつけず、袴だけで、額には宝冠(三角形で死者の旅路の風習)をつけ、榊と鈴をふって祓い清めることか
ら、田楽から出た「法師舞」だという説もあるが、舞そのものから水の流れ、あるいは渦の表現がみてとれる。

 十二番神楽 岩潜り(いわくぐり) (四人舞)  武御雷神(たけみかづちのかみ) 
                               天穂日命(あめのほひのみこと) 
                               天日一筒命(あめのまひとつつのみこと) 
                               手置帆負命(たおきほひのみこと)
頭に宝冠、女性の帯たすき、手に真剣の太刀をもち、舞は岩間を走る激流を表現するはげしい白刃の神楽舞。
身を清め、楽に合わせて舞う動作の移り変わりに、一瞬のたじろぎも許されない。四神人のほしゃどんの心と呼
吸が一つになるように先達が間を見て掛け声をいれる。

 十三番神楽 地割り (五人舞)  須佐之男命(すさのおのみこと) 
                       天児屋根命(あめのこやねのみこと)
                       太玉命(ふとたまのみこと) 
                       月夜見命(つくよみのみこと)
                       武御雷命(たけみかづちのみこと)
「地割り荒神」とも「地割り問答」ともよばれる。地割り荒神は農民の土地の割り替えを司る神で、地霊をまつる
神事であった。荒神が神面をつけ、五神と神楽宿の主人夫妻二人の合計七人が台所のかまどの前で酒をくみ
かわし、家の無事や長久を祈願する。やがて、太鼓の音に誘われて神庭(こうにわ)へと舞い込み、よろめいた
荒神だけが神庭の中へ入る。
荒神の神楽舞が終ると、米俵に腰を降ろした荒神と神主との「地割り問答」がはじまる。
そのあと、弓、矢、杖が神主に渡される。

 十四番神楽 山森(やまもり) (五人舞)  大山祀命(おおやまつみのみこと) ←山の神
                             四竜王命(しりゅうおうのみこと)←赤・白・青・黒
竜神の神楽舞で、弓と太刀を持った四荒神がいるので「四人鞭(よにんぶち)」ともいう。
はじめの四竜王神の舞は六番の「地固め」に似ている。竜王神たちが鹿の皮で太鼓を作るときの舞で、つづい
て、山の神がシシ二頭を引き連れて舞う。そして、山の神がシシの上に乗って退治すると、追い出されたシシ
は翌朝神楽宿へ戻るまで家々を訪問してまわり、酒をふるまわれる。シシは山の神の従者と考えられていて、
シシが山の神にかわって各戸の無病息災を見届ける。

 十五番神楽 袖花(そではな) (四人舞)  天鈿女命(あめのうずめのみこと) 
                             抓津姫命(つまつひめのみこと)
                             石凝姥命(いしこりどめのみこと) 
                             木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)
極めて静かな神楽舞で、四女神の舞う振袖がゆったりとひるがえる。天孫降臨のあと、猿田彦命は天鈿女命と
結ばれるが、そのときに袖を引いて導くことから「袖花」という。
「恋の指南の神」の猿田彦命と「舞や芸能の神」の天鈿女命との恋の成就を祝う舞で、見る人も優しい気持ちに
なれる。

 十六番神楽 本花(ほんばな) (四人舞)  天鈿女命(あめのうずめのみこと) 
                             抓津姫命(つまつひめのみこと)
                             石凝姥命(いしこりどめのみこと) 
                             木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)
「袖花」と同じ四女神の舞で、瓊々杵尊(ににぎのみこと)の許しを得た猿田彦命と天鈿女命の結婚を祝う神楽。
新穀と榊の枝を乗せたお膳を三本指で支えもって静かに舞い、収穫感謝と豊作への祈願が込められる。
舞が終ると、新米は神前に供えることから大願成就を花の結実に重ねて「本花」と表現する。

 十七番神楽 五穀 (五人舞) 倉稲魂命(うかのみたまのみこと) 
                      大田命(おおたのみこと)
                      大宮売命(おおみやめのみこと) 
                      保食神(うけもちのかみ)
                      大己貴命(おおなむちのみこと)
素襖にちはやを着て神面をつけて舞う。ひと舞するごとに五穀(米、稗、粟、豆、麦)を分け合う収穫感謝を表現
している。「袖花」「本花」で大地に穀物を植える準備をして、この「五穀」で播くという三番一体の神楽。

五穀:押方芝原神楽

 十八番神楽 七貴人(しちきじん) (八人舞) 大国主命(おおくにぬしのみこと)ほか御子七神
これより二十番の「御神体」まで少し息抜きの面白い演目が続く。
まず、大国主命とその七人の子神の神楽舞は、親鬼神が六尺の荒神杖をもって一斗桝の上に仁王立ちになる
と、七人の神が観客の中から登場して、一人ずつ舞う。七人の子神は舞を知らないためにどのようにも舞い観客
の爆笑を誘う。
親鬼神が杖を持って舞を止めて引っ込める場面は滑稽に見えてユーモラス。

 十九番神楽 八鉢(はっぱち) (一人舞) 少彦名命(すくなひこなのみこと)
薬、医学の神といわれる少彦名命が、太鼓を打つしぐさをしながら軽々に舞い、何度か逆立ちに挑むが首尾よく
できずに首をかしげる場面が愛嬌。そのうちの逆立ちができようになり、最後には太鼓の上で逆立ちをする。
少彦名命は大国主命の分身と考えられいるが、少彦名命が唐から珍しい宝や薬草を手に入れて帰国する喜び
を表現したものといわれる。

 二十番神楽 御神体(ごしんたい) (二人舞) 伊邪那岐命(いざなぎのみこと) 
                               伊邪那美命(いざなみのみこと)
収穫感謝の「酒こしの舞」とも、イザナギ、イザナミ二神による「国産みの舞」ともいわれていて、神楽舞という
よりもよりエロチック寸劇の様相。
国産みの二神が仲良く酒をこす作業をしていて酒を飲む。やがて酔った二人は抱き合うのだが、やがてイザナギ
は観客席に乱入して女性を物色して、気に入った人に抱きついていく。イザナミは怒りイザナギを連れ戻して寝
かせるが、今度はイザナミが男性を物色しはじめる。そしてまた二神は仲直りをして抱き合う。
このドタバタのエロチック寸劇の神楽舞には、五穀豊穣、家庭円満、子孫繁栄の願いが込められている。

御神体:高千穂神社神楽殿

 二十一番神楽 住吉(すみよし) (四人舞) 大綿津見命(おおわだつみのみこと) 
                              中筒男命(なかつつおのみこと) 
                              底筒男命(そこつつおのみこと) 
                              表筒男命(うわつつおのみこと)
「稲荷神楽」ともいうが、海神(わだつみのかみ)を讃える舞。
軽快な音律に乗って舞い、鈴と御幣で大海原を表現する。

 二十二番神楽 伊勢(いせ) (一人舞) 天児屋根命(あめのこやねのみこと)
岩戸開きの序曲舞。
約一メートルの七段走りの岩戸幣、赤の鉢巻に鈴、扇で静かに舞う。
この「伊勢」に、「柴引」「戸取り」「舞開き」「鈿女」を加えて岩戸五番といい、三十三番中でも格調高い神楽舞。

 二十三番神楽 柴引 (一人舞) 太玉命(ふとたまのみこと)
「伊勢」とともに岩戸開きの前の重要な神楽舞。
太玉命が「天香久山(あめのかぐやま)」の榊を根から引き抜いて、天の岩屋の前に飾る舞で、「柴引」とは高千
穂の方言で、榊を根引きすることをいう。

 二十四番神楽 手力雄(たぢかたお) (一人舞) 手力雄命(たぢからおのみこと)

白面をした手力雄命が天照大神が隠れた岩屋戸(いわやと)を探し出し、岩戸を開くための思案をする神楽舞。

手力雄:高千穂神社神楽殿

 二十五番神楽 鈿女(うずめ) (一人舞) 天鈿女命(あめのうずめのみこと)
天照大神が岩屋に隠れて闇となったその岩屋の前で、ストリップの元祖といわれる天鈿女命の気品に満ちた優
雅な神楽舞は、「天鈿の舞は神楽腰を抜いて舞え」というほどに難しい。

鈿女:高千穂神社神楽殿



 二十六番神楽 戸取(ととり) (一人舞) 手力雄命(たぢからおのみこと)
赤面をかぶり、天の岩屋の岩戸の根を掘り、神を振り乱して舞う手力雄命の舞は力感が溢れる。
 あらら来り大神殿 何とて出でさせ給わぬ
  出させ給わぬならば われ八百万神の力を出し
   一方の戸を取りて投げ捨つれば山田ケ原に着きにけり
 また一方の戸を取りて投げ捨つれば
  日向国橘の小戸の阿波岐原にぞ着きにけり
   そのとき日月さやかに拝まれ給うものなりやア
と唄いながら、手力雄命は渾身の力を振り絞って岩戸を投げて舞い終わる。

戸取:高千穂神社神楽殿



 二十七番神楽 舞開き(まいひらき) (一人舞) 手力雄命(たぢからおのみこと)
天照大神がお出ましになり、再び世界が明るくなったことを喜び祝う神楽舞。
ほしゃどん全員が神庭に這いいて鏡を奉じて舞開きの唄を唄う。
  天の戸を押し分け出ずるヤー 天の戸を
   月や日を双手にもちてヤー 舞い遊ぶ
    月こそまされヤー 宵も照らしゃる

 二十八番神楽 日の前 (四人舞) 天児屋根命(あめのこやねのみこと) 
                         猿田彦命(さるたひこのみこと)
                         思兼命(おもいのかねのみこと) 
                         天鈿女命(あめのうずめのみこと)
天照大神のお出ましを祝う静かな神楽舞。
「幣(ひ)の舞」ともいわれて、大きな幣を神に見立てて舞う重要な神楽舞。

 二十九番神楽 大神(だいじん) (三人舞) 矢房八郎拝鷹天神(やぶさのはちろうはいたかてんじん)
                            道反命(みちのたんのみこと) 伊勢津彦(いせつひこ)
「大神神楽」ともいって、大海神の清めの舞で、願掛け、願解きの意味がある。
舞いは動きが遅く、ゆったりと静かな神楽舞。

 三十番神楽 御柴(おんしば) (三人舞) 十社大明神(じっしゃだいみょうじん) 
                            氏神(うじがみ)
                            天穂日命(あめのほひのみこと)
「柴上げ」とも、また「柴乗り」ともいい、「御柴」をもって願成就とされ、三十三番中の圧巻。
天孫瓊瓊杵尊(てんそんににぎのみこと)(十社大明神)と氏神が榊を束ねたものに馬乗りして、片手に日の丸
の扇を掲げ村人に担がれて外注連(そとじめ)の周りを三度回り、神庭に進む。外注連を回るとき、二人の神様
は村人の「ヨイヨイサーヨイヨイサー」の掛け声で天高く担ぎ上げられ、その高さを競い、その勝敗で翌年の豊作
を占う集落もある。神庭では荒神と神主の間で問答が行われる。

 三十一番神楽 注連口(しめぐち) (一人舞) 手力雄命(たぢからおのみこと)
「注連口」にはじまる三番は神送りの神楽で、注連をとり外す儀式の終楽の神楽舞。太刀無双の手力雄命が
現れて、入鬼神(いれきじん)の四神が「みどりの糸」の日月を手にとって引きながら注連の前で舞う。八百万
神の出発準備の神楽舞。

 三十二番神楽 繰り下し(くりおろし) 天児屋根命(あめのこやねのみこと) 
                          天村雲命(あめのむらくものみこと)
                       天日鷲命(あめのひわしのみこと) 天帆負命(あめのほおいのみこと)
神楽宿の設備を取り払う神楽で、引番と同じ四神が「みどりの糸」四筋を分けて、外注連に向ってにぎやかに舞
い納める。

 三十三番神楽 雲下し(くもおろし) 神漏美命(かむろみのみこと) 
                         手置帆負命(たおきほおいのみこと)
                         天児屋根命(あめのこやねのみこと) 
                         思兼命(おもひのかねのみこと)
                         太玉命(ふとたまのみこと)
五神が榊をもって、東、南、西、北、そして中央と、五方を舞ったあと、吊るされた雲の網と四方の注連をとって、
六調子で「東方天の神の数は…」と唄いながら舞い、雲糸が引かれ、神庭一面に紙ふぶきが舞う。
神楽唄を奉唱して舞い納め、神庭中央の太鼓の上に「雲」が下され、御幣を神前に置き、一同拝礼をして神面
を納める。
最後に、内注連を取り外して、二日一夜にわたる高千穂夜神楽は終る。


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