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尾鈴山

尾鈴山

尾鈴山


尾鈴山は尾鈴県立自然公園内にあり、山中を流れる名貫川上流に数多くの滝が瀑布群を形成しており、 その内の30有余の滝が『国指定名勝』となっています。

尾鈴山と名貫川
尾鈴山と名貫川

この写真は4月上旬の夕刻に国道10号線の東側を海岸沿いに走る道に架かる橋の上から撮ったものです。
光っている川は河童の伝説で有名な名貫川です。

尾鈴山は和歌山牧水の生まれ育った日向市東郷町坪谷からや、東の都農町からや、南の川南町からなどが一般的な姿として親しまれていますが、太古火山として壮年期だった頃は荒々しい山だったようです。
現在は標高1405mで決して低い山ではありませんが、その緩やかで穏やかな稜線が描くシルエットが尾鈴山を優しいイメージに仕立て上げます。

尾鈴山は過去に大規模な二回の火砕流噴火がありました。
この火砕流噴火は多量の溶結凝灰岩を北東から南東方向に向かって流出させました。
日豊海岸国定公園南部のうちの門川町から日向市美々津にかけての海岸の大部分はこのとき噴出した酸性岩体で、その酸性岩体が露出した結果、日向岬に代表される見事な柱状節理を形成しています。


●尾鈴山の名前の由来

都農の地は古くから馬との関わりが深い土地柄で、遠い昔の平安時代には兵部省の朝廷直轄の官牧であった「都濃野馬牧」がありました。
時計を大急ぎで回転させて、徳川時代になり高鍋藩が1609年に開いた「野別府岩山の牧」は、1859年までの約250年の間続き、多くの名馬を産出してきました。

昔むかし、尾鈴山に一頭の白馬がいました。
人々はその白馬を捕まえようとしましたがとても素早い馬で人の手には負えず、とうとう白馬は尾鈴山深くに入ってしまい尾鈴の神の神馬となりました。
尾鈴の神は時々この白馬に跨って、都農の上空を駆け回ったり、都農神社にお参りをしたので、まれに白馬に乗った尾鈴の神を見ることが出来たそうです。
白馬の首にはいつも鈴が下げられていて、尾鈴の神が空を白馬で駆けると、その鈴の音は清らかに美しく遠くまで響き渡り、鈴は黄金色に輝いたといいます。
やがて人々はこの神様を「お鈴様」とあがめ、この山を「尾鈴山」と呼ぶようになったといいます。



矢研の滝●矢研の滝

尾鈴山は石英斑岩でできている山で、石英斑岩は水を通さない性質の岩であるために、山に降った雨は地下に滲み込むことがなく、すぐに沢に集まってくるために多くの滝をつくることになります。

同じ理由で雨はすぐに集まってきて名貫川の怒涛の流れをつくりだします。

矢研の滝は尾鈴山瀑布群を代表する滝で「日本の滝百選」の一つで落差は73mあります。

この写真は滝のほぼ真下から見上げるようなアングルになっていますので、高さを感じにくいのですが、滝の全容を捉えているので使うことにしました。

矢研の滝は神武天皇が東征の折、ここに立ち寄って矢を研いだという伝承が名前の由来になっています。


●矢研の滝への1回目

尾鈴山への一回目はただ何となく有名な「矢研の滝」を見ようと思ってきました。

山への道路は標識でずっと確認していたので麓の駐車場にはなんの問題もなく着きました。

そこで車を降りて、平坦といってもいいくらいの道を観光ピクニック気分でゆっくり歩いて行って矢研の滝に着きました。

若葉の滝滝壺までも簡単に行くことができて、「これが矢研ぎか…」と、雑学を修めるようにその姿を何となく脳裏に納めました。


●矢研の滝への2回目

尾鈴山への二回目は「神武天皇」のページを改訂するときにどうしても「矢研の滝」が必要になって来ました。

台風一過の素晴らしい青空の日の朝早く、バイクに乗って来ました。

麓の駐車場までの途中の道は、台風で吹き千切られた枝が至るところに散乱していて、また山から流れ出た岩や砂利も多くあって、水もいたるところで道に流れ出していて、とても目的のところまでバイクで行くのは困難かのように思えました。

それでもせっかく来たのだからと言い聞かせて、慎重に運転をして駐車場までたどり着きました。

そこから滝まで歩いたのですが、この山道も普段は涸れている沢から多量の水が流れ出して道を塞いでいて、歩きながら少しばかり緊張させられました。。

特に「若葉の滝」の前は膝までの川になっていて流れも速く、そこではとうとう諦めて靴を脱ぎズボンを膝まで上げて通りました。

若葉の滝から矢研の滝までの転落防止のトラロープのある細い短い道では、眼下に水しぶきをあげて轟々と唸りながら流れる川が見えました。

その道を流れまで下りてみると、普段は穏やかな渓流のはずの小さな川は激流と化していて渡ることはできず、滝壷まで行くのを断念するしかありませんでした。。

辛うじて「神武天皇のページ」用の(暗くて不鮮明で決して満足できない)写真を遠くから撮りました。


尾鈴山5合目付近の登山道●尾鈴山登山

5月、宮崎の山々が一斉に輝きはじめたころ、「よし尾鈴山に登ろう」と思いたちました。

事前確認が得意ではないのですが、矢研の滝を除くと尾鈴山は全く経験がなかったので少しネットで調べてみたら、尾鈴山には登山のルートが目的の応じて3通りあることが分りました。

何はともあれ先ずは尾鈴山の山頂に登らないといけません。

2時間もあれば山頂に着くことができることが分ったので、8時に登山を開始して12時頃には下りてきて、それから再び矢研の滝に向かうという計画をおおまかに立てました。

矢研の滝は前回の写真が不満で、その解消をこのとき同時に済ませたいと思ったからです。

登山の日、天気はまずまずで、視界もまずまず。
予定より少し早く矢研の滝やキャンプ場のための駐車場を通り過ぎて、岩見滝、あじさいの滝、次郎四郎滝、いこいの滝などを見ながら矢筈林道を進んで登山口近くの駐車場に着きました。

そこに車を止めて歩きはじめるとすぐに目立たない案内板があって、そこが樹木中の登山道の入口でした。


尾鈴山頂付近から都農、川南、高鍋方面を望む

登山道は長年多くの人が歩いてきたために腐葉土などの表土が流出して、樹木の根が表面に露出していました。
尾鈴山的特徴だと思うような場所の写真を撮りながらゆっくり楽しみながら登っていきました。

登山口が08時03分、頂上間近の9.5合目の展望所が09時51分で、ほぼ予定通りでした。
誰かの「頂上には景色ナシ!」と書いた情報があったので、ここでしばし周囲の景観を楽しむことにしました。

景色の南東クウォーターは、都農、川南、高鍋にかけての直線の海岸線がよく見えます。

尾鈴権現は船の白い帆が嫌いなことで有名で、頂上から白い帆の船をと見ると、海が穏やかであっても必ず転覆させた。
それを恐れた船乗りは尾鈴山から見下ろすことができる海域を航行するときには必ず帆を降ろして通っていた。
後に、海の見えない所に尾鈴権現を遷座するとたちまち転覆は無くなったという。

尾鈴山のそんな伝説が身近に感じることができるような宮崎県中部独特の直線状の海岸を見ることができます。

頂上付近で二つのグループと少し一緒に過ごしていると、二つのグループは周回コースを歩くようでした。
やっぱり事前調査不足です。
それと、いい意味で当てが外れたのですが、展望所から長崎尾にアケボノツツジが咲いているのが見えました。

「長崎尾」は初めて聞く山の名前でしたが、周回コースは尾鈴山山頂から長崎尾を経由することも知り、アケボノツツジは長崎尾に集中していることも分りました。

時刻は10時少し前のことであったので、迷わず周回コースを行くことに決めました。



アケボノツツジ●アケボノツツジとの遭遇

尾鈴山の山頂から一度谷に下りると、そこから陽に映えて美しい長崎尾の頂を仰ぐことができました。

そしてその辺りからアケボノツツジがちらほら見えるようになりました。

私とすれば(この年の)ほんの少し前、五ヶ瀬町の二上山で満開のアケボノツツジを見たばかりでしたので、始まったばかりの「尾鈴山アケボノツツジショー」をまだ冷ややかな目で見ていました。

が、その冷ややかな目はやがて熱く輝く感嘆の目に変わっていったのです。

それはもう全く期待していなかった尾鈴山(山系)のアケボノツツジを心行くまで堪能することができたのです。

アケボノツツジは樹高が6mに及ぶことがあるとはいいますが、おそらく南限であろうと思われる尾鈴山系のアケボノツツジはもっと高い樹がありました。
また悠仁宮のお印として知られるようにもなった立派なコウヤマキとのツーショットもあちこちに見られました。

アケボノツツジの感動の鑑賞のさなか、一人の年配の女性が私の装備がウェストポーチだけで外に何もないことに気がついて、それを心配してペットボトル一本の水をくれました。
そして容器の中に入れていた「日向ナツ」を食べるようにもすすめてくれました。

私のとっては山に登る人がペットボトル一本の予備の水を持っていることがとても驚くべきことでした。
彼女にとっては山に登るのに何と不用意なことかときっと呆れていたに違いありません。

彼女は山の常連のようで、水分を補給しないと足の筋肉が痙攣すると教えてくれました。
ペットボトルの水をいただいたときには「水は山にあるだろう」ぐらいの安易な考えしかしていませんでしたので、ご好意には嬉しく感じていましたが水に関してはさほど感謝してはいませんでした。

市房山方向を望む

長崎尾の頂上を過ぎたところで南西クウォーターの視界が開けました。
市房山(1721m)はほぼ真西に約30キロのところにあって、日常の地上の距離感とは異なります。

南西の霧島連山まではその倍の約60キロのところにあって、肉眼での確認は十分可能でしたが、空気中の不純物のためにぼんやりと霞んでいました。

彼の親切な女性は中国からの汚れた空気の影響で視界が悪い日が多くなったと小さく嘆いていました。


●下山

いただいたペットボトルの水は少しずつ分けて飲みながら山を下りていきました。
麓の林道に下りるまでは水が湧きだしているところはなく、いただいた水に大いに助けられた結果になりました。
「日向ナツ」をいただいたときに飴玉5〜6個もいただいて、この飴も下山しながら一つずつ時間をおいて口にいれました。

下山したのは16時になっていました。
当初の計画の2倍の8時間も山を歩いたことになったのです。

もうとても「矢研の滝」に向かう気力も体力もありませんでした。
そして彼の親切な女性に大いに感謝しました。




白滝●白滝コース

二日後、ゴールデンウィークも終盤の5月6日に「白滝」を見るために尾鈴山に出かけました。

このコースは紅葉の滝、すだれの滝、さぎりの滝、ささらの滝、やすらぎの滝、はがくれの滝といった、姿はそれぞれに美しいのですが少々樹木で遮られることの多い滝を見て行くコースです。

「やすらぎの滝」の滝壺のところで錆びて曲がったレールを見ました。

ところが一般の鉄道のレールに比べて明らかに細いレールなのです。

本当はその少し前から少し変なものがあると思っていましたが、追求したいと思わずにやり過ごして歩いていたのです。

ただ、はっきり鉄道のレールだと判断したら不自然などこそこに錆びたレールが曲がって横たわっているのが目につきはじめました。

また誰が何のために築いたのかと疑問に思う石垣も何ヶ所もありました。

実はこんな山の中にトロッコのレールが敷設されていたというのです。

このトロッコ道は、明治から大正にかけての事業で、昭和33年に撤去されるまでの約50年間現役を続けました。

現代は往時に比べるとはるかに物質に恵まれた生活をしていますが、人間の活力とかいった部分では、逆にはるかに劣っているのではないかと考えさせられました。

尾鈴トロッコ道は、最高海抜800m、総延長50kmだったといいます。


このコースは滝見学コースと言っていいくらい滝が楽しめるコースです。

このコースのメインフォールの白滝は水量が足りないという不満を聞くことがありますが、落差が大きく(75m)、多段の滝ゆえの美しさを備えています。

柱状節理の岩が美しく並んだ絶壁を水が流れ落ちる様は、巨大なシャンパングラスタワーのようで、優雅さを感じさせます。

このコースは運動量もそこそこありますが、小学校の3〜4年生の体力があれば白滝までは行けるのではないでしょうか。
沢を流れる水音を聴きながら親子のコミュニケーションをするのには手頃なコースだと思いました。

●さらに矢研の滝

相変わらず矢研の滝の写真は不満の状態が続いていました。
一月たった天気のいい日に出かけました。
前日は雨が降ったのですが決して大降りとはいわない普通の雨だったので、「これくらいならあそこは渡ることができる」と踏んで出かけました。
甘かった。

一月半後、矢研の滝は4回目になります。
やっと積年(?)の思いを果たすことができました。
矢研の滝の撮影のお許しをいただきました。


矢研の滝の滝壺の前に立つと瀑布の飛沫が飛んできてマイナスイオンに満ち満ちています。
そして瀑風が巻き起こす天然のミストシャワーの世界です。
滝の周りには幾つかのケルンがあります。
それは登山者への道標ではなく、誰かへの弔いの意味のものでもなく、それはこの場所が敬虔な気持ちになって祈りたくなるような厳かな場所だからではないかと思うのです。

神武天皇の伝説や、饒速日命(にぎはやひのみこと)の伝説などは、そんな場所柄が生み出したものなのかも知れません。


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